絵は自分の描きやすい方法で描けばいいという話

私の絵の描き方は、アナログもデジタルもめちゃくちゃ我流でした。

私が「自分の趣味は絵や漫画を描くこと」だとハッキリ意識したのは小学校低学年の頃ですが、当時はそもそもネットが無くて絵の講座なども見られませんでしたし、絵の描き方の本も入手方法が分からなかったというか存在すら知りませんでした。
なので何も考えずに我流で描いて、その時に身に付いた手クセで40代まで突っ走りました。

だから、どの時期に描いた絵を出してきても、私の絵の印象は小学生の頃から変わらないのです。

成人してからは絵の通信講座なども受講してみましたが、それで劇的に何かが身に付いたという感覚はありません。デッサン教室に行っても、他のさまざまな絵のトレーニングをしても、どうしても眠くなって寝落ちしてしまいました。私は、絵以外の勉強なら大抵のことはできたのに、絵の勉強だけは前世の業かと思うほどできませんでした。

でも勉強ではなく自由に描いている時は眠くならなかったので、同人活動は楽しんでいました。
そして、やがてネットが普及してデジタル絵を描く人が増えてきた頃、知り合い達が自分のデジタル絵のメイキングをサイトで公開したのです。

ある人は、レイヤーを必要以上に細かく分けていて「今回はレイヤー150枚使いました」と言っていました。私は、どんなに細かい絵でもそこまで要らないだろとか、見る専の人にはその苦労は伝わらないだろとか、心の中にさまざまなツッコミが渦巻いたものです。

でも別の人は「レイヤーの使い方が分からない」と言って、線画も色塗りもすべて1枚のレイヤーでしていて、これも別の意味で私には真似できないことで非常に驚きました。

私自身はと言うと、デジタル絵に使うレイヤーは3~5枚くらいで、平均よりはちょっと少ないほうでした。線画と色の2枚だけでも大丈夫でしたが、それでも最低2枚は欲しかったです。
なので当時は、レイヤー1枚の人に対しては「描きにくくない?」と思い、レイヤー150枚の人に対しては「ひたすらクソ重いだけで意味無くない?」と思いました。

でもよく考えてみたら、完成した絵に問題が無ければ、どんな方法で描こうと人の勝手です。
それぞれのやりたいようにやればいいと、今は心からそう思います。
レイヤー1枚の人は、レイヤーの使い方が分からないから、紙に描くのと同じように描いていたのだろうし、レイヤー150枚の人も本人が面倒だと感じていなければ問題ありません。

私も、学生時代に美術部の友達に「絵はアタリを一切取らずに描いている」と言ったらかなり驚かれました。また、人物の絵を描く時、私はアタリ無しで顔の輪郭から描くのですが、アタリ無しで眉毛から描くという人もいて、その人はそれでバランス良く描けていたので、見ていて不思議な気分になりました。眉毛が無いキャラはどうするのか、少し気になりましたが。

講座や本などを見て絵を描き始めた人は、そんなに変な描き方はしないと思いますが、我流で、自分ではそれが普通だと思ってやってきた人の描き方は、時に他人がビックリするような方法や手順だったりすることがあります。そう考えると、私も詳しいメイキングなんて公開したら「そんな描き方で大丈夫か?」とツッコまれそうなので、それは勘弁してほしいです。

なので、過去に「絵の描き方を教えてください」と言われた時も「線画、塗る、終わり」としか言えませんでした。実際、それ以上わざわざ言うべきこともありませんので。
というか、他人の方法が自分にも合う確率は低いのだから、外野は気にせず自分の好きな描き方で描けばええんやで!と、もう同人引退した私が無責任にアドバイスします。

最後に、私は中学生の頃まで、スクリーントーンを買うお金をケチって、アナログ原稿の濃淡の点々を自分の手で描いていたことを告白します。当然、スクリーントーンと同じ見た目にはなりませんでしたが、手描きだと分かるからこそ狂気を感じると言われました。

子供の頃の我流の描き方は、自分でもよくあんな事をしていたなと思うものも結構あります。

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コメント

  1. ミサキ より:

    こんにちは。
    前回の記事にもコメントしたミサキと申します。

    こちらの話題もとても興味深く、色々考えさせられました。
    昔に比べてネットで他の人の描き方や講座を見ることの出来る機会が増えた影響は大きいです。

    私の場合、最初は他の人の描き方をマネしてみるものの、しばらくすればほぼ我流の描き方に戻っていることに気付きました。

    我流で描いた方が後で見返したときに上手くいってる場合が多く、何よりスムーズに描けてます。

    他の人のメイキング等を見ること自体は好きなので、今後も見るとは思いますが、自分の描き方も大切にしたいと思いました。

  2. ヒロコ1号 より:

    >ミサキさん
    こんにちは。本などで紹介されている描き方は、絵を描くのが初めてで何も分からない人がとりあえず参考にする一般的な方法だと認識しています。そこから描き続けていくうちに、その人独自の方法が生まれてきて、自分の描き方を確立していくこともあります。

    我流から入った人は、そりゃあ自分の描き方が一番描きやすいでしょう。
    他人から見てどんなに変な描き方でも、本人はそれで描いているわけですし、一番大事なのは完成した絵が満足のいくものかどうかで、過程はなんでもいいと思います。

    特殊な描き方をしている人のメイキングには興味がありますが、私自身は自分の方法が「これ絶対変だと言われそう」と思うとむしろ隠したくなるので、詳しいメイキングを公開したことは1度もありません。同じ理由で公開したくない人は他にもいるかもしれませんね。

  3. より:

    今晩は。いつも読ませて頂いております、標です。
    私も絵は自分の好きな描き方で良いと思います。
    他人の絵の作り方を好きという理由ではなく、これが正しいでインプットし過ぎると固定観念に囚われる可能性もあるので。

    大量にレイヤーを使う人間なのですが、
    レイヤーは増えても減っても特別なことはあまり感じないですね。
    というのも、外の光、手、足、顔、衣装、アクセサリーあと背景のパーツ分けで、
    パーツのレイヤー分けと、影のレイヤー分けさえあればあっさり100は超えるもので
    私の絵を計算してみたのですが、人物のみで124…?でした。
    私は同人ゲームを作るのが好きで
    ゲーム用にパーツ分けをしないといけなくて癖がついただけなんですね。
    アナログ絵はラフ画、原画+塗りで2枚で描いてます。
    レイヤーの使い方は私はあくまでもその人の個性と捉えてますね。

    スクリーントーンの手書きは凄すぎます…!
    カケアミを手書きで描く方はいましたが、ドットを手書きは初めて聞きました。
    トーン、学生時代は中々厳しいお値段ですよね。私はアイシートーンの値段に戦慄してました。

    とても懐かしくて、為になる記事でした。

  4. ヒロコ1号 より:

    >標さん
    こんばんは。絵の描き方って、決まった形があるようで案外自由なものだと思います。
    確かにゲーム用の絵だと、パーツ分けのために多くのレイヤーが必要になりますね。

    私が中学生の頃の財力では、安いメーカーのトーンでもそこまで自由に買うことはできませんでした。カケアミやその他の効果線は当然手描きで、それだけでなく点々も自分で打っていたわけですが、実はそれは、お金だけが理由ではありませんでした。

    私は「アナログ原稿にトーンを貼った時の、トーンと紙の段差」が個人的に嫌いでした。
    アナログ原稿の、トーンやホワイト等でデコボコしている感じが不快だったのです。
    とは言え、やはり手で点々を打つのは大変でしたので、高校からはしぶしぶトーンを使うようになりましたが、それでもできるだけトーンは少なめにするように心掛けていました。

    デジタルに移行するとそれらの不快感はすべて解消されたので、トーン貼りにも抵抗が無くなりましたが、これは他の人にはあまり理解されない感覚だと思います。
    描き方だけでなく、こういった本人にしか分からない謎のこだわりも人それぞれです。
    現役の頃は人に言うことも無かったので、今になって告白するのは楽しいです。