漫画や小説などの作品において、大事なのは技術か内容か?…もちろん、両方ハイレベルなのが一番良いに決まっていますが、そんな作者は滅多に存在しません。見る側の人達は技術と内容を総合的に判断して、それぞれが許容できるものや楽しめるものを選んでいます。
そんな中で自分の作品を気に入ってもらえた時は、とても嬉しかったです。
昔、私がピクシブを使い始めたばかりの頃、同ジャンルにものすごく絵が上手い人が現れて、ピクシブにも漫画を上げていました。絵の技術自体は、以前からいた大手さん達よりも上だったと思うのですが、ピクシブの評価は画力のわりにサッパリでした。
その人の漫画は全部のコマにビッシリと背景が描き込まれていて、確かに絵は凄いし手間がかかっているのは分かるのですが、緩急というものが無く見ていて疲れる画面でした。
コマ割りが変で内容が頭に入って来ないし、話は何度も見たようなテンプレネタだし、画風にもその人独自の個性というものは感じられず「絵の技術書」のような印象でした。
私はそれまで多くの漫画作品を見てきたつもりでしたが、あそこまで絵の技術にのみ全振りして他をすべて捨てたような漫画は、後にも先にも見たことがありません。
技術的にはジャンル内の誰よりも上手いのに、読んだあと「絵は上手いけど…」以外の感想が何も出てこず、評価は大手さん達に遠く及ばず、とても不思議な感覚でした。
その高画力絵師さんはネット上で愚痴ったりするタイプではなかったため、どう思っていたのかは謎のままですが、数回投稿しただけですぐにジャンルから去っていきました。
大手さん達の作品はもちろん絵も上手いのですが、それ以上に内容が多くの人を萌えさせます。
技術的に下手でも心に残る画風もあります。ラクガキでも面白ければ高評価がもらえます。
この話から考えると、作品は技術よりも内容が大事ということになりそうですが、かと言っていくら内容が良くても技術が残念すぎる作品は読む気がしない人もいると思います。
漫画だけでなく小説も、いくら好みの内容でも台本SSでは萎えるという人もいるでしょう。
見る人の心を掴む何かというのは、技術以外のところから生まれることが多いです。
でも最低限の技術が無ければ「いくらなんでも見苦しい」とスルーされてしまいます。
今思えば、私の画力はその辺ギリギリだったかもしれないなと背筋が凍っています。
私の絵は「鑑賞に堪えないレベルのヘタレ絵」だと感じる人も少なくないはずですが、それでもジャンル内で人並みにかまってもらえていたのは、更新の早さや解釈に共感してくれる人が多くいたおかげだったと思います。同人の世界が、技術だけですべてが決まってしまう場所ではなくて一番助かったのは自分ではないかと、引退してからホッとしています。
まあそんな終わった話は置いといて、作り手側としては結局は自分の好きなように作ることしかできません。でも、それが見る人にもウケるかどうかは分かりません。
そういう点でも、他人の評価に依存するより自分が楽しむことを考えたほうが良いという結論になるのでしょうね。同人に限らず、物を作る趣味は何でもそうではないでしょうか。
コメント
ヒロコさま
いつも興味深く読ませていただいております。
私が昨年即売会に参加した折、創作ジャンルでおとなりさんはすごくうまいサークルさんだったのですが、お客さんが全然いなかったのが印象的でした。おとなりさんが離席中におとなりさんのpixivを見てみたのですが、なんと創作漫画が2千ブクマもされていたのです(その漫画の本もイベントでは頒布されていました)。私が見ていた限りではおとなりさんは2冊しか売れていなくて、別に普通のお姉さんで身なりがおかしいということもないし、もっとファンが来てもおかしくないのでは?と不思議でならなかったです。少しお話させていただきましたが、元プロの方で白泉社の雑誌にも描いてらしたそうです。このお姉さんの件と結びつけるのはお姉さんに申し訳ない気もしますが、まゆたんのタイバニ本の例もありますし、プロレベルにうまい人の同人誌って萌えにくいのかな…?となかなか考えさせられる事案でした。
長々と申し訳ありません。今後とも更新楽しみにしております。
>まゆさん
ピクシブのブクマ数は多いのに本は売れない人の話も、何度か聞いたことがありますね。
逆に、ピクシブではあまり評価されていなくても本は順調に売れている人もいます。
ピクシブでブクマを積極的にする層と実際にイベントに足を運んで本を買う層は違うとも考えられますし、ピクシブでタダで見られるなら見るけどお金は出さないという層やオフラインの本に興味が無い層には、いくら好かれても本の売り上げには繋がりません。
元プロのお姉さんの閲覧者には、そういう人が多かったのかなという気がします。
同人誌でどういうものがウケるかは、商業誌のそれとはまた違うと感じていますが、言葉で説明しろと言われたらちょっと無理です。ただ「絵が上手すぎても萌えにくい」という感覚は何となく分かります。でも下手すぎても見れたもんじゃないし、難しいですね。
創作物の世界というのは本当に、理屈では説明できないことが多いです。
今回のご指摘、興味深いですね!
絵がうまいけれど、細部を描き込み過ぎている。これありがちですよね。
美大とか専門教育受けた人とか、うまいけれど個性がない絵。ネームに力入れてなくて、ただのイラストになっているだけの絵。
ジャンプ漫画でいうと、約ネバは絵がごちゃついて読めなくて、どっかで見たようなファンタジー絵(ジョジョに影響受けてる?)。鬼滅は絵の下手さに最初は辟易するけれども、味がある。ストーリーで感動します。あの違いですよね。比較したら失礼だけども。
最近、自殺したとかいう新人漫画家さんも画力高いのにもったいないと惜しまれていたけれど、たぶんこの人、売れないだろうなと思いました。テーマが自分目線なので。
絵描きさんは引きこもって絵を描くだけじゃなくて、音楽聞いたり、文章書いたり読んだり、社会のことに関心拡げたり、生身の人間と会って、他の素養も積むべきだと思います。
同人出身者は絵がうまいけれど、お話づくりが圧倒的に下手。
とくにGLだのBLだの特定の萌えで売ってきた人は、社会人経験がないのか、誰を描いても同じ小学生の顔に見えてしまう(ギャグならいいけど)。
もちろん、売れる売れないではなく、個人間で楽しむだけなら、技術だの良し悪しを競い合うのは馬鹿らしいですね。
>通りすがりの字書きさん
今回の話は、みんな敢えて言わないけど心の底では分かっていることなんじゃないかなと思います。絵は上手いけど読みづらい漫画は、お話を伝えたいんじゃなくて技術を見せたいだけみたいな感じがするんですよ。絵も上手くて内容も面白い漫画は、お話をより良く表現するために絵を向上させているという感じがします。
面白い漫画について語る時、実は画力に言及することはあまり無い(絵以上に語りたいことがたくさんある)んですよね。絵が上手くなくても内容でヒットさせることは可能ですが、絵が上手いという要素だけでヒットした漫画は残念ながら私は知りません。
画力に固執する人もそれは分かっていて、でも内容のセンスは練習で身に付くものではないから悩んでいる…と思いたいのですが、私の記憶では無駄に高圧的な人が多かったです。
また、同人というか二次創作で面白いと評価されるネタは、特定のジャンルが好きな人達の中だけで通じる身内ネタの性質が強いので、商業誌の面白さとはまた違うものです。私は身内が笑ってくれればそれで満足でしたので気楽に同人を楽しんでいましたが、商業へ行きたいとか思っている人は同人でウケようとする前に考えることがあるのではないかと思います。
こんばんは。いつも拝見させていただいてます。
絵だけでも話だけでも、とバランスが難しいのがマンガですね。ただ技術は後からでも付いてくるものなのでやはりマンガはお話作りが1番かなと思います。とは言え今は本当に上手い人が多いので認知して貰うには絵も…と昨今の同人作家さんは超えないといけない壁が高すぎて大変だなぁと思います。
それでもそこまでのレベルに行くまでの何百何千ものラフからの努力の賜物が絵の上手さなのは尊敬に値すると思います。
なんか支離滅裂ですみません
>通りすがりのマンガ描きさん
こんばんは。絵は練習すれば上手くなるとは言っても、実際に練習して画力を上げるのは言葉で言うほど簡単なことではないなと、若い頃デッサン教室に行って寝落ちした経験がある私としては思います。絵の練習は過酷なので、努力している人ほど、自分より絵が下手な人が自分より人気があると複雑な気分になるのは分からなくもありません。
技術は無いよりはあったほうが有利ですが、同じように上手い人が多い中で目立つためには結局プラスアルファの個性が必要なので、やはり厳しい世界だなと思います。
内容の面白さ、絵のうまさよりも、このページのココがすごく萌えて、何度も見返したくなると言うのが、商業や同人にも共通して、本として手元に持っていきたいというのがあると思います。プロットにしたら、??なんだけど、心理描写が上手というか。
横から失礼しました。
ご本人がのびのび描かれているのって、読んでいるこちらも伝わりますよね。
いつも素敵な記事をありがとうございます。
他の方のコメントも楽しいです。
>めいこさん
印象に残るシーンやカットなども、作者さんのセンスによるものですね。何が読者の琴線に触れるかは分からないけれど、そんな風に心に残るポイントがある作品は良いものです。
例外もあるかもしれませんが、特に同人では、本人が楽しく描いているか(評価も気にしていたとしても、それはそれとして楽しんでいるか)は見る側にも伝わると考えています。
何でもいいから数字が欲しいとか、技術を上げれば評価が貰えるだろうとか、それしか考えていない人の作品に読者は寄り付きません。これはわりと事実ではないかなと思います。
おもしろい記事だったので、コメントいたします。
>何でもいいから数字が欲しいとか、技術を上げれば評価が貰えるだろうとか、それしか考えていない人の作品に読者は寄り付きません。
評価が欲しいのは事実でしょうけど。
ツイッターでお絵かき作法とか指南をつぶやいているとか、それに乗っかっているのを見ると、もやもやします。「絵が上手くなりたいな~」とか「誰それさん、うまくて羨ましい」とか、そんな声。
いちいちそんなことつぶやくよりも、楽しそうに黙って投下してるひとの方が好感もてます。その原作好きなんだな、という愛が伝わる。技術にこだわる人は結局評価が欲しくて、別のジャンルにどんどん行ってしまうので、褒めても無駄だと感じますね。見てる側もわがままだとは思います。
ネット上でデッサンのトレースできるようなサイトもあるので、絵師さんの画力は昔より上がっているけれど、どれも似たり寄ったりで面白くないですね。色遣いとかも。最大公約数的というか、無難に好まれる感じばかり。飽きます。
私が好きな漫画家さんは決してデッサン力高くないのですが、絵に特徴があり、ひと目見て、その人の画風がわかります。古典の解釈がうまくて、感心します。おもしろい漫画がつくれる人は、小説家やら映画監督やら、ほかの表現者になっても絶対才能開くんじゃないでしょうか。技術として画力は高くなりますが、センスはどうしても天性のものがありますよね。
>UNKNOWNさん
ピクシブにも「お絵かきノウハウ」的なものは投稿されていますが、ああいうのをきちんと活用できる人は本当に稀で、ほとんどの人は見ただけ&ブクマしただけで理解した気になって自分の絵の上達にはまったく繋がっていないのが何とも切ないです。
おっしゃる通り、最も好感が持てるのは「黙って楽しそうに投下している人」です。
同人の場合は、作る側もまた見る側でもあるはずなのに、なぜ「自分が見る側だったら、不平を言っているだけの人と楽しそうに描いている人、どちらを応援したくなるか?」という想像ができないのか不思議でなりません。現役時代からずっとずっと不思議です。
評価が欲しいと思っていながら、自分の評価を下げるような振る舞いをしている人は本当に意味不明です。同人の世界に長くいても、そこに気付かない人があまりにも多いです。
最近の絵師さん達の絵の多くがどれも同じに見えるとか、流行の絵柄がイマイチ肌に合わないとかは、私が老人なので仕方が無いと考えています(今の絵師さんの中にも好きな絵柄の人はいますが)今の若者のほうが昔の若者よりも上手い人が多いのは良いことだと思います。
でもアイデアの引き出しや個性についてはやはり、ノウハウではどうにもなりませんね。