同人活動をしていた頃は、解釈違いの作品を見てしまってムカつくとか、公式が変なことをしてジャンルの行く末が心配だとか、とにかくいろいろなことに腹を立てていました。
冷静に思い返すと、楽しいことと同じくらい腹立たしいこともあった気がします。
ですが、同人を引退した今は「こういう作品は嫌い」とか「公式のここが酷い」というような感情が現役時代と比べてとてつもなく薄くなり、穏やかな日々を過ごしています。
現役時代は、自分も作品を作りながら、毎日ピクシブで自ジャンルの作品をすべてチェックしてブックマークもしまくっていました。イベントで本を大量に買って、好きなサイトを毎日巡回して、何ひとつ見逃すまいと頑張っていました。
そんな風に漁りまくっていると、たまには地雷な作品に当たることもあります。
でも、萌える作品にもたくさん出会えるから、見ることはやめられませんでした。
萌えた時の感動も、地雷を踏んだ時の憎しみも、どちらも私の同人ライフを彩っていました。
萌えて仕方なくて、愛おしくて狂おしくて、その萌えを邪魔するヤツは許せなくて、怒りで頭と胃が痛くて、憎らしくて息苦しい…もう二度とあんな日々は来ないと思います。
それらの感情がきれいに蒸発した今は、とてつもない不快感に苦しむこともなく、特定の作品について他人がどんな議論をしていても、冷静に一歩引いて見られるようになりました。
それと同時に、創作意欲も失いました。
今も、オタクである限りは、ネットをしていれば二次創作が目に入ることもあります。
ですが、自分から積極的に探そうとはしていませんし、たまたま見ることがあっても、昔ほどいろいろな感想は思いつきません。「ああ、こういうネタなんですね」で終わりです。
これなら描いた人に苦情を言うことも無いし、作品を覚えておく必要もありません。
何かを大好きになったり、ひとつのことに打ち込むのは、一般的には良いことのように言われていますし、私も昔はそう思っていました。でも実際は、そのせいで視野が狭くなったり、無駄に人と衝突して苦しんだりと、マイナスな面もたくさんあります。
打ち込んでいるものも無く、物事に対して「別にどうでもいいや」なんて言う人を、昔はいいかげんだと軽蔑していましたが、今はそれも大事なことだと理解できます。
好きなことに打ち込むあまり「自分にはこれしかない」と思い込んだり、こだわりが強いせいで自分の思い通りにならないと怒りが湧いたりするのは、とても苦しいことだと私は知っています。
よく、公式の展開が気に入らないとか地雷を踏んだとか愚痴っている人に対して、安易に「嫌なら見るな」とか「スルーできないのか」と言う人がいます。
ですが「スルーできるようになる」ということは、すなわち「そのジャンルやキャラにそこまでの興味が無くなる」ということでもあるのです。
興味が無いからスルーできるのだし、内容が気にならないから見ずに閉じることができるのです。
何かに執拗に噛みついて愚痴っている人は、周囲から見ればウザイですし、本人も苦しいかもしれませんが、その人にはまだ情熱が残っているとも言えるのです。本当にすべてを見限った人は黙って去るので、誰にも迷惑はかけませんが、公式にとってはそちらのほうが損失なのです。
コメント
ヒロコ1号さま、はじめまして。
他所様のブログにコメントすることはめったにないのですが、共感しましたので。
>萌えて仕方なくて、愛おしくて狂おしくて、その萌えを邪魔するヤツは許せなくて……
>もう二度とあんな日々は来ないと思います。
これは恋ですね。
ジャンルは様々でも、萌え対象に全力で恋するのがオタクなのでしょう。
そして恋が冷めてしまえば情熱もなくなり、「あっそう」とスルーできるようになるのでしょう。
ぼくはまだ、恋を諦めきれていないようです。
twitterのトラウマ(退会済)、中の人のやらかし、公式への失望……
そんなことばかり続いてずっとイライラしていました。好きでやってるはずの趣味なのに、なんでこんな怒ってばっかりいるんだ俺?と自問自答していました。
ふと検索窓に「オタク趣味 ストレスがたまる」と打ち込んでみたら、Google先生が「こんなブログあるよ、読んでみ?」とおすすめしてくれました。
他の記事も拝読しました。ジャンルは違えどもオタクあるあるなことばかりで、共感しつつ読んでおります(ぼくの場合は同人や二次創作ではないのですが)。
やはり創作をされていた方は文章が上手で面白いですね。一歩間違うと毒吐きになりそうな内容も、クールな笑いを交えて巧みに表現されているのは感心しました。
>まこTさん
はじめまして。コメントありがとうございます。好きでやっている趣味なのに、なぜか怒りが湧くことばかりというのは、わりと多くの人が経験していると思います。
私は同人活動していた頃、同じ趣味を持つ他の人たちも大勢見てきましたが、ジャンル内のいろんな事に怒っている人は普通にたくさんいました。もちろん、良い事があった時も大騒ぎするのですが、嫌な事があっても同じくらいうるさいです。この熱狂はまさに恋です。
そして、冷めてしまった人は全部がどうでもよくなるわけですが、これは傍から見ると「うるさく文句を言わないマナーの良い人」に見えます。だから外部から批判されることも無いかもしれませんが、そんな静かな人ばかりになれば、それこそそのコンテンツは終わります。
私も現役時代はあらゆる方面に迷惑をかけてきましたが、まさか冷めてから「あの怒りもまた愛だった」なんて文章を纏めることになるとは思ってもいませんでした。ブログ記事は、できるだけ私の真意が正確に伝わるように、何日か寝かせながら書いています。
今は心にポッカリと穴が開いて寂しいですが、情熱があった頃はそれはそれで苦しいことも多かったので、どちらが良いかは何とも言えません。とりあえずブログは今後も続けたいです。