同人活動の思い出

同人活動の思い出/作りすぎた同人便せんを無料配布した思い出

まず、若い人は「同人便せんって何?」と思うかもしれないので、一応説明します。

昔、まだネットが無かった頃、オタクはメールやSNSではなく手紙で連絡を取り合っていました。
その時、市販のレターセットのほかに、同人作家が自作した便せんも使われていました。
イラストに罫線を付けて印刷したもので、サイズはB5が一般的でした。

私が高校生の時(1994年頃)に作ったオリジナルイラストの便せんを、ここに晒します。

本を1冊作る大変さに比べてイラストに罫線を付けるだけでいい便せんは、気軽に作れるので当時は大量に出回っていました。でもネットで交流ができるようになると手紙を書く人は少なくなり、それと同時に同人便せんの需要もなくなっていきました。

昔の印刷屋さんは、安く大量に便せんを作ってくれる「便せんフェア」などを企画してくれることがありました。私もその安さに釣られて、売れもしないのに2000枚も便せんを作ってしまった思い出があります。ただ、安さに釣られたとは言いましたが、印刷代がいくらだったかはまったく覚えていません。とにかく、2000枚も便せんを作ってしまったのです。

当時、私の作った本は30部売れれば充分という感じでした。
しかも買ってくれる人は、私の絵ではなく漫画の内容を褒めてくれていました。
絵で勝負する便せんが、本よりも売れるわけがありません。

それなのに2000枚も刷ってしまいました。10枚1セットで売っても200セットです。
どう考えても売り切ることはできません。自分で使うのにも限界があります。
便せん2000枚が詰まった段ボール箱が、部屋の中で死ぬほど邪魔でした。

余りまくった便せんはそれから数年間放置されていましたが、やはり片付けたいと思った私は、オタク系の情報誌で便せんを無料配布することにしました。「Find Out」(現在は休刊)という雑誌に手紙を出し、便せんをもらってくれる人を募集したのです。

昔は、郵送で何かを配布する場合、まず送料分の切手を相手から送ってもらって品物を発送するのが一般的でした。そのために雑誌に自分の住所氏名を公開するのは、当時は普通のことでした。ですが当時の私は何としても在庫を全部無くしたかったので、送料も私が負担すると宣言したのです。

そしたら、なんかめちゃくちゃいっぱい手紙が来ました。
便せんは200セット近くありましたが、その3倍ほど(600人くらい)から便せんが欲しいという手紙が来たのです。無料のチカラってすげーんだな…と、死ぬほどビビりました。

私は要らないものはタダでも要らない主義なので、有料で買わなかったものは無料になっても要りません。なので、送料も無料にしたからと言ってこんなに手紙が来るとは思っていませんでした。
怖…何こいつら怖…(´・ω・`)というのが、私の正直な気持ちでした。

あまりの手紙の量にパニックになりかけましたが、なんとか落ち着いて先着順に便せんを発送し、足りなかった人たちにはお詫びの手紙を送って、私の在庫処分は無事に終わりました。
この時に私が負担した送料や封筒代などは、おそらく便せんの印刷代より高かった気がしますが…もうどちらの金額も忘れたので、考えないことにします。

今考えれば、便せんは普通に紙ゴミとして捨てれば良かったと思うのですけどね。
とりあえず「印刷屋のフェアに釣られて刷りすぎるのはアホ」ということと「無料に飛びつく人たちは怖い=世の中は金がすべて」ということが分かった出来事でした。勉強になりました。

コメント

  1. うさぎ より:

    はじめまして、過去記事に失礼いたします。
    最近こちらのブログを見つけて、時間がある時に少しずつ拝見させていただいています。
    私はpixivなどに絵を上げるだけでイベントには参加しないため、同人界隈についてはなんとなくのイメージしかありませんでしたが、記事を読んでイメージが肉付けされていく感じでとても興味深いです。
    ヒロコ1号さんの絵ってすごくかわいいですね。この便せんのイラストも、リンク記事のページの同人誌のイラストもすごく好みです。奇面組のファンサイトのイラストも拝見しました(奇面組は存在は知っていますが内容は良く知りません。イラストを拝見してちょっと興味が出たので、機会があれば本編も読んでみようと思います)。どれもあたたかみがあって、やさしい気持ちになります。
    私は30半ばなのですが、中学生(1998年~2000年)の頃が一番漫画にはまっていた時期で、ファンロードなども読んでいたのですが、ヒロコ1号さんのイラストを見ていると、なんだかその頃の楽しかった気持ちを思い出します。
    あの頃はおたく界隈が、今よりゆっくり時間が流れていた気がしますね。
    メールやSNSではなく手紙で連絡、のくだり、ほっこりしました。

  2. ヒロコ1号 より:

    >うさぎさん
    はじめまして。ファンロード懐かしいですね!私も昔投稿してましたが、ファンロードはレベルが高くてイラストは載せてもらえず、他のオタク雑誌ならなんとかという感じでした。
    醜い争いは当時もありましたが、今のSNSみたいに「本当のオタクかどうかも怪しい人」が首を突っ込んできたりはせず、ファンもアンチも作品への情熱は確かにあったと思います。

    奇面組はピクシブにも二次創作を上げてる人はいると思いますし、ご興味があれば原作も読んでみてください。いわゆるキャラカタログ的な面もあるので、誰か1人は気に入るキャラがいるかもしれません。あと、絵の感想もありがとうございます。今でもまだそのように言ってくださる人がいるとはと驚いています。現役時代の楽しかった頃を思い出しました。

    昔いただいた手紙は今も手元に残してあります。昔はアナログ郵便にはお世話になりまくりでしたが、今はほとんど縁がありません。そこは時代の流れなので仕方ありませんね。

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