この話も、現役時代は大っぴらには言えなかったことです。
絵は下手よりは上手いほうが得ではありますが、趣味の二次創作を楽しむだけなら、そこまで真剣に絵の練習をする必要は無いと、私はずっと思っていました。単に私が絵の練習を一ミリも楽しいと思えなかったので、その気持ちを正当化するためにそう思っていたところもあります。
オリジナル作品なら、基礎画力を向上させたり個性を確立することも重要でしょうが、二次創作の場合は、ぶっちゃけ「最低限そのキャラに見えればOK」だとは思いませんか?
技術も個性も無いオリジナルはどうにもなりませんが、二次創作なら、元ネタの特徴さえ分かるように描いておけばどうとでもなるものです。極端な話、赤い髪のキャラなら、髪さえ赤く塗っておけばそのキャラだとゴリ押すことも可能ではないでしょうか。
商業作品のキャラ達は、顔立ちも髪型も衣装も、みんなが見てすぐに分かる特徴を備えていることが多いです。画力が無い人でもそれさえ描いておけば何とかなるはずです。
こちらは、私が2009年~2010年頃に描いた戦国BASASAの絵です。
私には、戦国BASARAの複雑な衣装を正確に描く技術はありませんし、キャラの顔をリアルに描くこともできませんが、作品を知っている人ならどのキャラを描いたかは分かると思います。その最低ラインさえクリアしていれば、漫画を描くのにも困りませんでしたし、本も買ってもらえました。
Fateやサクラ大戦も、キャラによっては作画コストが高くて面倒な時もありましたが、そのキャラの最低限の記号さえ押さえれば、誰だか分かる絵は描けます。
絵描きの絵の解説はやたら小難しいと思っている人もいるかもしれませんが、そこまで深く考えずにもっと気楽に絵を描いている人もたくさんいます。そういう人はわざわざ絵の描き方について語ったりしないので、表向きには存在が見えにくいだけなのです。
だから、初心者の人も怖がらずに軽い気持ちで好きなキャラを描いてみてください。
誰だか分かればいいんだよ!あとは知らん!という私の絵を見て、勇気を持って欲しいです。
ところで、奇面組で活動を始めた時に、乙女ゲームジャンルで交流していた人から「ヒロコさんって奇面組の顔がちゃんと描けるんだ!」と驚かれたことがあります。
その人は私の乙女ゲームキャラの絵しか見たことがなくて、イケメンキャラしか描けないと思っていたそうです。ともかく、私の描く奇面組がちゃんと奇面組に見えたなら良かったです。
奇面組の顔レベルになると「自分の画風に落とし込む」などということは考えずに、見たまま描くのが一番ラクで早いです。他作品にもこれに当てはまるキャラはいると思います。
ただ「見たまま描いた」つもりでも、原作の絵とまったく同じにはなりません。
これは良く言えば「私の個性」ですが、悪く言えば「技術不足」のせいだと理解しています。
こういった考えで描いていると、二次創作は結局元ネタの力のおかげで形になっているもので、二次創作でチヤホヤされても自分の実力とは無関係だということがよく分かります。
でも趣味の二次創作とはそういうものです。だから、二次創作絵で評価されて「自分が絵描きとして認められた」とか「自分に価値がある」と思ってしまう人のことは昔から苦手です。
その時見てくれた人がその時だけでも楽しんでくれたのなら良しとするもので、熱が冷めれば忘れ去られていくもの…とても儚いものですが、それでも私はやっていて良かったと思っています。
コメント
こんにちは!
よくよく考えてみると商業作品のキャラクターは一発でわかるようなデザインをしていて、ヒロコ1号さんの意見になるほどなぁと思いました。ヒロコ1号さんの絵、キャラの特徴をきちんと掴んでてイイですね!以前別の記事でオリジナルイラストを載せていましたが、あの作品も可愛らしくて好きです!
2次創作は原作のキャラクターや物語や設定の力が多大に働くので、知らず知らずのうちに自分の実力だと勘違いしやすいですよね。オリジナルはその人の実力が分かりやすいのである意味残酷かもしれません。
私は10年前から本格的にオリジナルで漫画やイラストを描くようになりましたが、自分で一から作ることの大変さ、物語を完結させることの大変さを身にしみて感じます。だからこそ完成した後の達成感や愛着は計り知れないです。
プロの方が描いたファンアートを見ると、その人の個性がいい感じに出ている時があって「あっ!あの人だ!」と思うのでそこも2次創作の面白さですよね。
>フォルフォルさん
こんにちは。二次創作は、原作を知っている人達がキャラを判別できてネタを理解できれば成り立つものなので、オリジナルと比べたらとてもお手軽です。
でも、だからこそファン同士でワイワイ楽しめる趣味なのだと思います。
人気ジャンルにいた頃、ピクシブでブクマが4桁付く人が、オリジナル絵を投稿したらブクマが1桁で、それ以降は人気ジャンルの作品しか出さなくなったことがありました。
オリジナルはしっかりと自分の芯を持って、二次創作以上に大変でも楽しんで続けていくメンタルが必要ですので、オリジナルで活動している人は本当に尊敬します。
私も二次創作の存在を知るまではオリジナル漫画を描いていたのですが、二次創作のお手軽な楽しさに負けてしまいました。原作の画風と私の画風の相性にもよりますが、ほとんどのジャンルでは最低限のキャラの描き分けはできていたつもりです。
そこでたまにオリジナル絵も出して「可愛い」と言ってもらえるのも有難かったですね。
プロの方が他の作品のファンアートを描く場合は、素人のようなお手軽感は無くて、格の違いを感じます。やはり自分とは何かが違うと感じ取れます。
こんにちは。ミサキと申します。
かなり前から読ませていただいておりましたが、初めてコメントいたします。
これまでヒロコ1号さんの同人活動やSNSに関する記事に共感したり、励まされておりました。
私は二次創作を長年続けていますが、それと同時に上達したいという気持ちもあり、だんだん気軽に描けなくなってしまいました。最初は楽しく描いていたはずが、続けていく中で、だんだんとハードルが上がっていってしまったのです。
なので、ヒロコ1号さんの「初心者の人も怖がらずに軽い気持ちで好きなキャラを描いてみてください」という意見に励まされました。
上達したいという気持ちはあるので、イラストに関するブログ発信を約1年前から始めました。それがきっかけで、オリジナル絵を描き始めたのですが、二次創作とは違った楽しさを発見できた気がします。
気楽に描きたいと思いつつ、それができず悩むと思いますが、これからもお絵描きと向き合っていきたいです。
記事の更新毎回楽しみにしております^^
イラストもキャラが生き生きしていてとても素敵です。
どうかご無理なさらず、更新を続けていただけると嬉しいです。
>ミサキさん
こんにちは。前向きなお絵描きを意識することは、とても良いことだと思います。
絵を描き始めたばかりの頃は気軽に楽しく描いていたのに、長く続けていると他人からの評価を気にしたり、上手い人と比べたりして純粋に楽しめなくなる人が少なくありません。
でもそれは、プロでも目指しているならともかく、趣味なら考えなくてもいいことです。
SNS疲れなどもそうですが、どう考えればラクになれるのかというのは、人から言われないと案外気付かない場合もあるのかなと、最近は考えるようになりました。
同人をしていた頃とは違う形の発信を、当時とはまったく違う気持ちでやっています。
オリジナルは二次創作とは違う楽しさがありますが、私の場合は、自分のオリジナルに萌えるのが難しかったので二次創作がメインになりました。もし、版権キャラよりも自分のオリジナルキャラに萌えることができていたら、オリジナルで活動していたはずです。
私の絵はもう何年も前のもので、今後同じように描くことはおそらくできません。
お絵描きの勉強は現役時代からサボりがちでしたが、今はそれ以前に、何かに打ち込もうとする心を私は無くしてしまいました。この記事の絵が生き生きして見えるとしたら、それは過去の元気だった頃の私の情熱の痕跡です。見てくださってありがとうございます。
こんにちは!
私がファンアートを描いていた現役時代は下手の横好きでしたね…。一度だけかなりキツくメールフォームで「このヘタクソ!」と言われたことがあって、「単純に楽しんで書きたいんじゃこっちは!」って逆ギレもしたくなったものの、当時の自分は(数年後メンタル的要因で引退することになる予兆なのか)言い返せなかった程悔しかった思い出があります。
元々絵に関しては向上心が殆ど無かった人間なので推しを描けるだけで幸せ〜な人間でした。そこに目をつけられた説はありそうですが(絵の練習を試みた事もあったんですが、つまらないと思って挫折しました…)。
読み専門になった今もキャラの判別が可能ならそれでいいかと思います。元のデザインへのリスペクトは欲しい所なのですが(一度だけとある方に対して思ったことが…げふげふ)。
絵に関しては今となっては自分だけが見るために描くことしか出来ないですね。上記の思い出とかもありますが、仕上げる体力がもう無いという意味合いも強い気がします(板タブとかの画材ももう手元に無い…)。
>ミナトさん
こんにちは。私も、絵の練習はやってみても苦痛でしかなかったので、かなり早い段階で諦めました。ミナトさんとまったく同じで、好きなキャラが描ければそれで良かったですし、自分の画力に変化が無くてもまったく気にしていませんでした。
でも現役時代は、趣味でも絵を描いているなら画力向上のために頑張らないといけないみたいに言う人がいて、講座だのメイキングだのをツイッターで流してきて、死ぬほどウザイと思っていました。人気のある大手さんは何も言わずに黙っているのに、萌えない作品を描く人ほどそういうのに必死でした。昔だけでなく、今でも同じなんだろうなと思います。
私は、自分の作品の売りは画力ではないと心得ていたので、絵を褒められなくてもノーダメージでしたが、それは遠回しに伝わってくるものだったから平気だったのかもしれません。
ミナトさんのように、直接メッセージが送られてくるのは厳しいかもですね。
今は、本当に絵はまったく描いていません。少しでも描きたい気持ちがあるなら、エンピツ描きでも何か描こうとするはずですが、気力も体力も見事にゼロです。