私が10歳の頃(1986年頃)の話ですが、小学校のクラスメイトの家でアニメ版「ハイスクール!奇面組」の録画ビデオを見ていた時に「ヒロコちゃんは唯と千絵どっちが好き?」と聞かれたことがあります。私は迷わず「唯ちゃん」と答えたのですが、クラスメイトの女子からは「えーっ!唯なんかブリッ子やん!絶対千絵のほうがいいわ!」と反論されました。
これがもしガチオタ同士の会話で、相手が千絵ちゃん過激派だったなら、戦争が勃発していたところですが、幸いクラスメイトは特にオタクではない普通の女子小学生でしたので、この話はこれだけで終わりました。でも、オタクの私は心中穏やかではありませんでした。
確かにブスがブリッ子なら地獄絵図ですが、唯ちゃんは作中でも屈指の美少女という設定です。
たとえブッていたとしても、本当に可愛いのだから問題ありません。
そもそも唯ちゃんは天然なのでブリッ子とは言えません。ブリッ子という言葉は今は完全に死語というご指摘もあるかと思いますが、昭和の思い出なのでご了承ください。
そんなわけで、私のリアルの周囲では千絵ちゃんのほうが好きという女子が多かったのだけど、原作で2回おこなわれた読者人気投票では、唯ちゃんが2回とも1位だったんですよね。
1回目の人気投票では男性票と女性票の内訳も発表されましたが、唯ちゃんに投票した女性もとても多かったです。なぜ私の周りには唯ちゃん派がいなかったのか不思議です。
ただ、奇面組で同人活動していた時は、唯ちゃんに特別な思い入れを持っている人のほうが多かったというか、キャラとしては両方好きでも「奇面組」という作品の中で重要な役割を持っているのは唯ちゃんのほうという認識の人が多数派だったように思います。
公式の人気投票の結果や同人オタクの間での意見と、小学生の頃に私の周囲にいた非オタクの女子達の意見が全然違っていたのが、今振り返るとかなり謎です。
人気投票にわざわざハガキを出すような熱心なファンや、キャラに強く執着して考察する同人オタクの間では、唯ちゃんが人気だったということなのでしょうか。
ところで、こういう話は「奇面組」以外の作品でもあると思います。
人気投票上位のキャラが自分の周囲では不評だったり、ネット上では嫌われているように見えるキャラが公式の人気投票では上位だったりすることが時々あります。
ネットが普及してからは、どの作品とは言いませんが「人気が無い(ように見える)キャラを人気投票で1位にして腐女子や子供泣かそうぜ」みたいな工作も簡単にできるようになり、そういう話を聞くたびに「人気投票とは何だろう?本当の人気とは何だろう?」と考えるようになりました。
ネットが無かった時代でも、組織票というものはあったと思います。
私がまだ若かった頃は、人気投票の結果を本気で気にしていました。
自分の推しの順位が低すぎた時は嘆き悲しみましたし、納得行かないキャラが1位になった時は公式のゴリ押しだの不正だのと、同意見の人達と一緒に叩いたりもしました。
ですが、投票する側の工作や組織票も、公式側の調整も、あっても無くても真相なんて操作している本人にしか分かりません。誰が本当に人気かなんて、全人類の心の奥の本音をすべて暴かないと真実など分かりません。それは人間には不可能なことです。
そこに気付くと、人気投票の順位なんて薄っぺらいものだと思えてきました。
本当に投票されたかも分からない知らん奴らの票の数に一喜一憂しても仕方がありません。自分が好きならそれでいいのです…と、全員がそう考えてしまったら、人気投票をお祭りとして楽しむ空気も無くなってしまうので、それはそれで寂しいかもしれませんが。
ただ、奇面組の公式人気投票には不正は無かったと思いたいなあ…と言いつつ、もし何か真相を知っておられる方がいたら、お話を伺いたい気もします。
河川唯は本当に一番人気だったのか、30年以上経って初めてそこが気になってきました。
コメント
こんばんは。
ありましたね、奇面組の人気投票。
あの当時の奇面組において、特定のキャラを意図的に持ち上げたり逆に下げたりする(読者側、または編集部サイドの)メリットや必要性みたいなものを自分は思い浮かばなかったので、投票行動に出た人のおおむね正確な数字を反映してるんじゃないかな?って個人的には思っています。
(この辺は、多くの人気投票企画を見てきたヒロコさんの方が、ピンとくる何かがあるのかも)
また、唯ちゃんに実際どのくらいの人気があったのかを改めて考えてみたのですが、
●そもそも唯ちゃんが序盤と終盤では結構キャラが変わっていて(いや変わったというより、成長と表現すべきか)、連載終了後に振り返るならその変化も含めた評価ができるけど、人気投票はそれが行われた時点での評価になってしまう
●アニメの唯ちゃんは漫画よりブリッ子成分が盛られている気がする。また演じている高橋美紀さんにもブリッ子ぽい声質を感じるので、アニメしか知らない人はそういうキャラに映るかも
…などなど、奇面組との接点やそれに触れた時期によって評価は多少なりとも変わる気がしました。
より深い話をすると、ヒロコさんが指摘している「奇面組という作品の中で重要な役割を持っているのは唯ちゃん」、という部分に行き着きますよね。
唯ちゃんって、奇面組という作品の根幹を成す最重要人物ではあるけれど、それが作中で表現されている部分って、ほんのわずかです(だからこそもどかしく、二次創作を作っている方々の原動力となっているのかも)。
先日ヒロコさんが最終回の解釈に関して、「奇面組の全話を覚えている自分と同じ条件を読者全員に求めるのは酷」とおっしゃっていたのを読んでなるほどと思ったのですが、それと同じく、サラッとギャグマンガを読みたい人に、唯ちゃんの存在意義にまで思考を求めるのは酷なのかもしれません。
なので、唯ちゃんの人気の実態を自分なりに分析すると
●イヤミの全くないかわいさは一貫して持ち続けていたので、終始安定した人気はあった
●でも本質的な彼女の魅力は、ライトな読者には伝わっていなかったと思う
●2回の人気投票は結構間が空いているので、同じ1位でも「唯ちゃんのどういう部分が好きか」という読者側の動機には変化があった可能性がある
…といったところでしょうか。
人気投票で唯ちゃんが1位になる理由と、二次創作をする方が唯ちゃんを推す理由は、少し違う部分にある気がします。
———–
ちなみに男子小学生の気持ちを思い出してみると、唯ちゃんにはわかりやすいかわいさが備わっていたので、ガキンチョだった男の子にも伝わりやすく、やっぱり人気があったと思います。自分もそうでした。
でも連載が進むうち(歳を取るうち)に千絵ちゃんの良さにも気づき、おっさんとなった今は天野邪子が一番よくね?(キャラとしてだけではなく、女の子としても)みたいな境地にも至るのですが、ここ一か月で突然奇面組熱が再燃してきた今ラスト三話を見直すと、やっぱり奇面組は唯ちゃんの物語だったんだな…と思い直し、最後は唯ちゃんに帰っていく気分です。
(いい歳したおっさんがこんなこと書いて、すごく気持ち悪いなっていう自覚はありますw)
>Crispyさん
こんばんは。確かに奇面組においては、編集部が票を操作する理由は思い浮かびませんね。
新沢先生も特定のキャラをゴリ押ししている様子はありませんでした。各キャラへの思い入れには差があったかもしれませんが、それが作品に露骨に現れることは無かったと思います。
むしろレギュラー以外の人気投票上位キャラは、連載後期には出番が減っていたような…
私はどちらかというと初期の唯ちゃんが好みです。高橋美紀さんの声も好きですが、同性からは共感されなくて寂しかったです。同人を始めてオタクの知り合いができると、その風向きも変わりましたが…キャラの好き嫌いについて男子と話す機会が無かったので、男子がどう思っているか知ることができれば当時も寂しくなかったかもしれませんね。
ギャグ漫画としてライトに楽しんでいる人は、唯ちゃんが重要人物という考えには行き着かないだろうし、あの最終回を読んでも何事かと驚くだけだろうから、その認識の違いは仕方が無いのだろうなと、今なら穏やかに受け入れられます。でも私は、同人をやめていなければこんなに落ち着いてはいないはずなので、それが良かったかどうかは難しいところです。
私は一生同人をやるつもりで、2次元キャラに対して男女問わず夢中になって、それなのに今は燃え尽き症候群みたいになっていることに絶望しています。でも、子供の頃に唯ちゃんを可愛いと思った気持ちは今でも思い出せますし、その原体験は後のオタク生活にも大きな影響を及ぼしました。いい歳ですが、死ぬまでにもう少し元気を取り戻したいものです。
懐かしいお話をありがとうございます。
リアルタイムの時は小学生でした。男子は豪くんの人気が高く、ノートに豪くんの絵が流行っていた時もありました。男子にとってはわかりやすいキャラですよね。単行本をじっくり読むとあの粗暴さは生活環境の複雑さからきているのかなと、いろんな想像ができてしまう奇面組はすごいです。
奇面組アニメのある80年代後半は、女性も前へ前へと出る時代だったから、ぱっと見、優等生キャラで奇面組の暴走をニコニコ受け止める唯ちゃんは、ツッコミ入れちゃう千絵ちゃんより、いいこぶりっこに見えたのかもしれないですね。女子間では、やはり千絵ちゃん人気がありました。作中では唯ちゃんの方が美少女キャラ設定だったのに、現実の方は千絵ちゃんの華やかさからか千絵ちゃんがお絵かきされているのが多かったです。ともすれば地味キャラに見えかねない唯ちゃんが、実は誰からも想いを寄せられてる設定、見る人はきちんと本質を見ているというメッセージが込められています。
唯ちゃんの現代の流行に疎い、大人しそうに見えて誰であろうと率直にものを言う、努力もしているけどもともとのスペックが高い。現実にいると、優等生で流行りも知らず、その場のノリがよくない、それなのに男子からはモテているという、一部の女子に煙たがられるキャラの可能性もあったり。奇面組がわかりやすい迫害を受けているとしたら、唯ちゃんもハイスクール!の作中には出てこないけど、3年奇面組のトゲトゲした学生時代の描写内では、窮屈さを感じてたかもしれないですね。
こういう考察を肉親や幼馴染に伝えたこともあったのですが、漫画の登場人物にそこまで考えたことがないと返され(笑)だけど、こういうことを考えている時ってとても楽しく、こうして考えを聞いてもらえるインターネットのありがたさと、ヒロコさんのコメント欄にとても感謝をしております。
キャラクター人気投票をされている時点で編集部にもとても奇面組は愛されていたんですね。零くん人気は、アニメスタッフにも見て取れて、オープニングのクオリティの高さに驚かされます。あの零くんがかっこいい!千葉繁さんの役作りもあって、頼り甲斐のある、はっちゃけ兄ちゃんのイメージにハイスクール!後期はなっていましたが、3年奇面組の哲学的で陰りのある零くんも、たまに読むとセクシーだなと思います。(千葉繁さんの演技もここぞという時は渋みがあって好きです。メリハリすごい)
長文失礼しました。
奇面組最終回、以前から用意されていた原稿だったというこぼれ話をコミックをで見かけた時、きちんと物語を終わらせる考えを持っていた新沢基栄先生の愛を感じました。作中では終わらない学園生活の印象が強いけど、最終回の流れに至るまで、それぞれの進路や思いにきちんと決着をつけさせたところにありがたさと、あえてその部分書き込まず、読み手に想像させる懐の深さ。あの最終回の流れの美しさも感動でした。
>めぐりず夢さん
こんばんは。コメント2つ分を纏めて返信させていただきます。
豪くんは確かに男子人気がありそうですね。豪くんの生活環境については、小学生の頃はよく分かっていなかったけど、大人になってから考えてみるとかなり闇が深いと感じました。
千絵ちゃんは髪型を変えてさらに華やかになったと思います。零さんも唯ちゃんも中学時代の雰囲気のほうが好きなのですが、千絵ちゃんは高校のポニーテール姿が好きです。
唯ちゃんの「流行に疎い」「大人しそうに見えてやる時はやる」「もともとのスペックも高いけど努力もする」などの特徴は、私の理想のヒロイン像として長年定着していました。
あと「モテるのに自覚が無い」もありますね。これらに該当するキャラにはハマりやすかったのですが、そういうキャラはあまり一番人気にはならないので、唯ちゃんは貴重でした。
確かに、オタクではない人からは「漫画の登場人物にそこまで考えたことがない」と言われてしまうのでしょうが、同人をやっているようなオタクにとっては、架空のキャラについて実在の人間と同じようにバックボーンを想像するのが当たり前です。私などは、それを想像しない人がいることを知って大変驚いたものです。これは今でも理解しがたいです。
コミックのこぼれ話(元祖ジャンプコミックスのハイスクール!奇面組18巻のおまけページですね)を見ても、あの最終回は突然描かされたのではなく前から用意していたそうですし、決して夢オチにしか取られないような描き方でも無かったと思うのに、叩かれたのはとても残念です。でもネットなら自分の考えを聞いてもらえる…確かにそうかもしれませんね。
自分は奇面組の検索でこちらにたどり着いたので、同人活動とは無縁の人生を送ってきました。
そうした人間でも、ヒロコさんの同人関連の記事からはものすごい熱量を感じます。
ネガティブな内容も多く、攻撃的な言葉も出てきますが、なぜかイヤな気分にならないんですよね。
むしろ自分には、それすらも眩しく見えてしまいます。
ただ…絶望、という文字を読むのは辛いです。
またいつか、失ったものを取り戻せる日が来るといいな、と思っています。
———–
唯ちゃんの初期と終盤のどちらが好きか、これまであまり意識したことはありませんでした。
作中での唯ちゃんの変化は、彼女の成長による自然なものと捉えているので、その変化も含めた全部が好き、というのが自分の正確な答えではあります。
でもそこをあえて考えてみると、そもそも自分の中での奇面組の軸みたいなものが、連載を読むようになった「ハイスクール!」の中盤くらいにあって、唯ちゃんに関しても同じなんですよね。
なので、何も意識せずに出てくるイメージって、どうしてもその辺の大人しくなった(大人びた?)唯ちゃんが先行してしまいます。
あと、ラスト三話の印象が強すぎて、そこに引っ張られてるってのもあります。
あの三話を読むまで、自分の中での唯ちゃんはもう少し印象が薄かった記憶があるのです。
今ある彼女のイメージの半分はあの三話の影響を受けていて、そのくらいあのラストは自分にとって(いい意味で)深い爪あとを残してくれました。
よって私の場合、どちらかを選ばなければならないのであれば終盤の唯ちゃん、ということになってしまいます。
別に「3年」の頃の唯ちゃんが嫌いというわけでは全くなく、改めて読み返すと、あれはあれで間違いなく唯ちゃんなんですよね…。
結構キャラは違うのに同一人物として認識できる、なんか不思議な感覚です。
(何度もコメントすいません)
>Crispyさん
実を言うと、奇面組で検索して来てくださる人も結構多いんですよ。今でも奇面組やあの最終回に関心を持っている人が少なくないことが分かって、凄いことだと思っています。
私の同人関連の記事は、昔の元気だった自分を今の冷めた自分が振り返って記録している感じです。今もアニメやゲームを楽しむことはありますが、同人をしていた頃のワクワクドキドキを100とすれば、今のテンションは1くらいです。それを「落ち着いてまともになった」と考えるか「情熱をなくして抜け殻になった」と考えるか、私自身もどうしたものかと。
私が初めて唯ちゃんを見たのはアニメ版の第1話でした。アニメ初期の話は原作初期の話をアニメ化したものが多かったので、初期の話の唯ちゃんのほうが印象深いのです。
あと唯ちゃんのイメージは長い年月をかけて少しづつ変わっていったので、当時はその変化にあまり気付かず、連載が終わってから「よく見たらかなり変わってる」と驚きました。
これも新沢先生が意図的に変えたわけではなく、それこそ「キャラが勝手に動いた」結果ではないかと私は考えています。現実の人間と同じように歳を取って、その中で変化して、それでも同一人物であるということではないかと。一方で、まったく変わらないキャラもいるわけですが、そちらもまた架空のキャラらしくブレないところが魅力だと思います。